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日経24.6.6朝刊 介護の社会福祉法人、合併容易に 経営改善促す

2024年6月6日 日経新聞 朝刊によると、政府は小規模な介護事業者の経営改善を促進するため、介護事業を手掛ける社会福祉法人同士のM&A(合併・買収)が容易になるよう、手続きや指針の解釈を明確にする方針を打ち出しました。この施策は、人手不足に悩む介護現場の生産性を向上させ、高齢化社会のニーズに対応するために重要です。

政府のデジタル行財政改革会議が6月中旬に開かれる会合で、武見敬三厚生労働相が介護事業の経営改善の政策パッケージを発表する予定です。岸田文雄首相は4月に、介護事業者の連携や集約を進める協働化・大規模化の支援策の取りまとめを指示していました。

背景には急速に進む高齢化があり、2025年には全ての団塊世代が75歳以上の後期高齢者となります。このため、介護サービスの需要が増大し、介護事業者の連携や集約を通じた現場の生産性向上が急務となっています。

介護サービスは訪問介護やグループホームなど多様な事業形態があり、小規模な事業者が乱立しています。そのため、採算が取れず、経営難から事業の継続が難しくなっているケースも少なくありません。東京商工リサーチによると、2023年には休廃業・解散した介護事業者が過去最多の510件に達し、倒産も過去2番目に多い122件を記録しました。同社は、業界の将来に不安を抱える小規模事業者が市場から退出していると指摘しています。

厚生労働省は、社会福祉法人の合併手続きや役員の退職金に関するルールを明確にし、合併手続きのガイドラインも見直す予定です。また、合併の際にファンドなど第三者からの支援・仲介を受ける場合の手数料など必要な経費をガイドラインに明記します。さらに、国が都道府県を通じて研修などを共同で実施するための費用を補助し、24年度中に230億円以上の国費を投じる予定です。

社会福祉法人へのM&Aの成功事例の紹介や手続き・ガイドラインの周知も強化されます。また、経営改善の必要性を認識してもらうため、都道府県が社会福祉法人の経営状況を分析し、公表する予定です。各都道府県にワンストップの窓口を設け、経営相談を受け付けることも計画されています。

さらに、M&Aによる経営統合まで踏み込まない場合でも、複数の社会福祉法人が人材育成や研修、採用活動などを共同で手掛けることが奨励されます。22年に導入された新たな形態である社会福祉連携推進法人の立ち上げを支援するため、新たに手引も作成されます。

社会福祉法人は、介護事業や保育所、障害者施設などの社会福祉事業を手掛ける非営利目的の法人であり、全国におよそ2万存在します。これまではM&Aのルールが周知されておらず、経営の統合が進んでいませんでした。しかし、厚労省は24年4月から、介護支援ロボットやデジタル技術などを活用した継続的な生産性向上に取り組んでいる事業者を評価し、介護報酬を加算する制度を新設しました。先進的な施設については、人員配置の基準を柔軟にする特例を認めています。

これらの先端技術の導入に投資するためには、一定の事業規模や安定した経営基盤が必要となります。M&Aの促進によって社会福祉法人の集約を目指し、生産性の向上を図ります。介護需要は高齢化で今後も増えると見込まれますが、低賃金などの理由から介護人材が不足しています。厚労省は、介護従事者が40年度には69万人不足すると推計しています。M&Aによって生産性が向上すれば、賃上げなど従事者の待遇改善にもつながると期待されています。

まとめ

今回の政府施策である介護事業者間のM&A(合併・買収)促進について、私は「賛成」・「反対」というよりも「必要不可欠な措置」ではないかと捉えています。現状の介護業界が抱える多くの課題を考えると、M&Aの推進は避けられない方向性であると認識しています。

介護業界は少子高齢化に伴い、需要が急速に増大しています。その一方で、小規模事業者が乱立し、経営基盤が脆弱なケースが多く見られます。多くの介護事業者が個別に経営を続けるのは困難であり、M&Aによって経営資源を統合し、規模の経済を実現することで、経営の安定性を高めることが急務ではないでしょうか。

また、介護人材の確保は深刻な問題となっています。過酷な労働環境が原因で人材の流出が進み、厚生労働省の推計では2040年度には約69万人の介護従事者が不足すると予測されています。統合による経営の効率化とスケールメリットの活用により、事業者は資源を集中して労働環境の改善や従業員の待遇向上に取り組むことが可能となります。結果として、介護職員の定着率向上に寄与する可能性があります。

さらに、介護支援ロボットやデジタル技術の導入には多大な投資が必要です。小規模事業者では導入が難しいこれらの先進技術も、規模の拡大によって実現可能となり、生産性の向上とサービスの質向上に大きく貢献します。

ただし、M&Aには慎重な対応が求められます。統合プロセスでは、従業員の雇用の安定や企業文化の融合が重要ですし、利用者への影響も考慮しなければなりません。これらの課題を適切に管理するためには、綿密な計画と専門的な知識が不可欠です。

総じて、M&Aは介護業界の現状を打破し、将来的な成長と安定をもたらすための現実的な手段なのかもしれません。

当社労士事務所では、この施策がもたらす変化を深く理解し、顧問先である介護福祉事業者や障害福祉事業者が持続可能な経営を実現できるよう、専門的なサポートを提供してまいります。

具体的な情報や支援内容については、今後も最新の情報を提供し続ける予定ですので、ぜひお問い合わせください。

引用元: 24.6.6日本経済新聞

 

 

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