ハラスメント防止対策

最近、こういったご相談、お悩みをよく耳にします。

  • パワハラについて、なにやら法律が整備されたらしいけど、正直、何から始めていいか分からない
  • ある特定の社員のパワハラが噂になっている。それが原因なのか、その部署の人たちが、しょっちゅう退職している。大きな問題にならなければいいけど…
  • うちの会社にはハラスメント問題なんてないよ、多分。…根拠はないけどそう思いたい。でも、断言はできないんだよな
  • 顧問の社労士はいるけど、ハラスメント問題に詳しくない。ハラスメントの資格もないし、アドバイスがいつも場当たり的に対応しているように思える。

Ⅰ.はじめに~ハラスメントは何が問題なのか

職場におけるハラスメントは、見過ごすことのできない重大な問題です。ハラスメント問題は、従業員の心と体に深刻なダメージを与えるだけでなく、企業全体の生産性を低下させ、信頼を失う原因となります。

具体例として、以下裁判例をご紹介します。

ケース1:パワハラで使用者の損害賠償責任が認められたケース

介護施設に勤務する介護職員が、業務上のミスをきっかけに、上司から、「どうしてあなたはいつもそうなの」「なんでできないの」と問い詰めるような口調で、長いときには10分くらい叱責を受け、最終的にはうつ病を発病し、焼身自殺したケースがあります。
裁判所は、「上司はこの介護職員の体調変化等を十分に見極めることなく、さらなる叱責を繰り返し、また施設長も何の対処もしなかった」として、使用者の安全配慮義務違反を認め、損害額約 5777 万円の支払いを命じました。

ケース2:セクハラに対する民事損害賠償責任が認められたケース

上司から「早く結婚しろ」「こどもを産め」などと複数回言われ、職場のバーベキュー大会での集合写真撮影の際に無理やりひざの間に座らされ「不倫しよう」などと言われたケースです。
被害者は、社内のセクハラ相談窓口に相談しましたが、この窓口責任者は「(この上司は)嫌がらせなんかをする陰湿なタイプじゃない」「どうやってあなたを自分たちのグループに入れたらいいのか、わかんなかったんじゃないかなと思う」などとこの上司をかばう発言を繰り返しました。
裁判所は、本来であれば、セクハラ相談窓口の責任者が速やかに調査を開始し、迅速な処理、解決にあたるべきところを何の措置もとらなかったとして、セクハラ行為の慰謝料として120万円、窓口責任者の不作為による慰謝料として80万円と分けて認定しました。

ケース3:マタハラで人格権侵害が認められたケース

デイサービスセンターの職員が妊娠したことをきっかけに、このセンターの所長が「特別扱いはするつもりはない」「万が一何かあっても自分は働くという覚悟はあるのか」「制服も入らないような状態でどうやって働く?」「妊婦として扱うつもりもない」というような発言をし、その後も入浴介助や車いすを抱えての階段昇降を行う送迎等の業務を命じた事案です。
裁判所では、「全体として社会通念上許容される範囲を超えるものであって、使用者側の立場にある者として妊産婦労働者の人格権を害するものと言わざるを得ない」と判断されました。


ハラスメント問題は企業の未来をも脅かすリスクです。上記のような裁判にまで発展するケースもあり、今すぐ対策を講じなければ、企業の評判が損なわれ、貴重な人材が離れる危険性があります。

Ⅱ.ハラスメントの現状と統計データ

ハラスメントは現代の職場において深刻な問題となっており、社会全体でその対策が急務となっています。以下の統計データは、ハラスメントの現状を具体的に示すものです。

厚生労働省の調査(令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」)によると、パワハラ、セクハラを受けた後の行動としては、「何もしなかった」(それぞれ 36.9%、51.7%)が最も多く、潜在的なハラスメント被害者が多数存在し、ハラスメント問題になる可能性が大いに潜んでいることがうかがい知れます。

また、都道府県労働局に寄せられるハラスメント(いじめ・嫌がらせ)に関する相談件数は、令和5年度には6万件を超えています。

(厚生労働省資料)
「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します
令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況

ハラスメントがいかに広範かつ深刻な問題であるかを示しています。

また、ハラスメントが発生した企業では、職場環境の悪化により生産性の低下や人材の流出、採用コストの増大といった労働生産性に悪影響を及ぼします。
さらに、法的責任が問われた場合には、損害賠償責任を負うだけでなく、企業の評判にも悪影響を及ぼし、信頼の喪失につながることも考えられます。
このように、ハラスメントは放置することのできない重大な問題です。

Ⅲ.そもそもハラスメントとは?

「ハラスメント」と聞くと、人によって受け取り方が異なるため、イメージが様々かもしれませんが、実は労務管理上ではその内容は法令(労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法等)で明確に定義されています。

1.パワーハラスメント(パワハラ)

職場において行われる、優越的な関係を背景とした言動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害される行為。以下の6つの類型があります。

  1. 身体的な攻撃:暴行や傷害行為
  2. 精神的な攻撃:脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言
  3. 人間関係からの切り離し:隔離、仲間外し、無視
  4. 過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
  5. 過小な要求:業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
  6. 個の侵害:私的なことに過度に立ち入ること

2.セクシュアルハラスメント(セクハラ)

職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動により、労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害される行為。以下の2つの種類があります。

  1. 対価型セクシュアルハラスメント:性的な関係を要求され、それを拒否した結果として解雇や降格などの不利益を受けること
  2. 環境型セクシュアルハラスメント:性的な言動により就業環境が不快なものとなり、労働者の業務遂行に支障が生じること

3.妊娠,出産,育児,介護休業等に関するハラスメント(マタハラ・パタハラ・ケアハラ)

職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されること。

職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されること。

Ⅳ.事業主に求められる措置

令和元年の第198回通常国会において「労働施策総合推進法」が改正され、職場におけるパワーハラスメント防止対策が事業主に義務付けられました。(これを機に、世間でもこの法律が「パワハラ防止法」として認知されるようにもなったかと思います。)
併せて、「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」においても、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントに係る規定が一部改正され、職場でのハラスメント防止対策の措置に加えて、相談したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止、国・事業主及び労働者の責務が明確化される等、防止対策の強化が図られ、令和2年6月1日から施行されています。
パワーハラスメントの雇用管理上の措置義務について、中小事業主においても令和4年4月1日から義務化されました。

これによって、厚生労働省の指針により、企業の規模や職場の状況に関係なく、事業主はハラスメント防止のための必要な措置を講じなければならなくなっています。具体的には以下の措置が求められています。

1.方針の明確化および周知・啓発

  • 事業主の方針を明確にし、就業規則などに規定すること
  • 職場でのハラスメントを禁止する方針を労働者に周知・啓発すること

2.相談体制の整備

  • 相談窓口の設置と運用
  • 相談者が不利益を被らないための措置の実施と周知

3.適切かつ迅速な事後対応の実施

  • ハラスメント発生時の迅速な対応と被害者への支援
  • 再発防止のための具体的な対策の実施

4.リスク要因の解消

  • 職場環境の見直しとリスク低減のための取り組み
  • 労働者間のコミュニケーション改善や業務体制の整備

Ⅴ.専門家への相談のすすめと当事務所の強み

ハラスメント防止対策は重要ですが、企業独自で全ての項目を完璧に実行することは難しい場合が多いのではないでしょうか。
ここで、専門的な知識と経験を持つ外部の専門家の支援が非常に有効です。当事務所は、ハラスメント防止のための包括的なサポートを提供し、企業が直面する問題を迅速かつ的確に解決するお手伝いをいたします。

当事務所の所長は、21世紀職業財団認定のハラスメント防止コンサルタントとしての豊富な経験と知識を持ち、これまで多くの企業や施設で成功事例を積み上げてきました。実際の現場での経験を基に、具体的で実効性のある対策を提案し、経営者や管理者の皆様が安心して業務に専念できる環境づくりをサポートいたします。

Ⅵ.当事務所のハラスメント防止対策メニュー

1.ハラスメント防止ポリシー策定支援

現状分析まず、現在の職場環境や従業員の意識、既存のポリシーや規程の有無を徹底的に調査します。このステップでは、従業員アンケートやインタビュー、内部監査などを実施し、ハラスメントのリスクを明確化します。
ポリシーの設計分析結果を基に、企業の文化や業務内容に適したハラスメント防止ポリシーを設計します。このポリシーには、ハラスメントの定義、許容される行動と禁止される行動の具体例、違反時の処罰規定などが含まれます。
規程/ルール等の作成新しいポリシーに基づき、具体的な行動規範や手続き、報告体制を定めた詳細な規程を作成します。また、必要に応じて就業規則、育児介護休業規程等の見直しも行います。これにより、従業員全員がハラスメント防止に対する理解を深め、適切に行動できるようにします。
周知・啓発策定したポリシーと規程を効果的に従業員に周知します。ポリシーや規程を社内ポータルや掲示板に掲載し、常に確認できるようにします。

2.ハラスメント対策研修

研修プログラムの設計企業のニーズや業種に応じたカスタマイズされた研修プログラムを設計します。研修内容には、ハラスメントの基本概念、具体的な事例、法的責任、対処方法などが含まれます。
管理職向け研修管理職には、ハラスメント防止のリーダーとしての役割を果たすためのスキルと知識を提供します。具体的には、ハラスメントの早期発見と対処方法、適切なコミュニケーションの取り方、相談を受けた際の対応方法などを学びます。
一般職向け研修役職についていない一般職の従業員を対象に、ハラスメントに対する理解を深め、リスクを未然に防ぐための行動指針を提供します。特に、長年勤めている従業員が陥りがちなハラスメントリスクについて具体的な事例を通じて学びます。また、ハラスメントを目撃した際の適切な対応方法についても教育します。

3.ハラスメント発生時対応サポート

事実確認ハラスメント防止コンサルタントおよび国家資格キャリアコンサルタントの資格を持つ専門家が、相談者と行為者、さらに必要に応じて第三者に対してヒアリングを行い、客観的な情報を収集します。
適切な処置の提案調査結果に基づき、行為者に対する改善指導を提案します。これには、口頭注意、書面での警告、懲戒処分などが含まれます。
相談者への支援策相談者が安心して働ける環境を取り戻すための具体的な支援策を提案します。業務内容の見直し、職場内での配置転換などが含まれます。
再発防止策の提案ハラスメントの再発を防ぐための具体的な対策を提案します。これには、全社員への再教育、ハラスメント防止研修の強化、職場環境の改善などが含まれます。

4.ハラスメント相談窓口設置支援

相談窓口の設計

体制構築の支援:企業の規模や業種に応じて、最適な相談窓口の体制を設計します。専任の担当者を設置する場合や外部委託を利用する場合など、企業のニーズに合わせた体制を構築します。

業務フローの策定:相談窓口の運営に必要な業務フローを策定します。相談の受付から事実確認、対応策の実施、フォローアップまでの一連の流れを明確にします。

担当者のトレーニング相談窓口の担当者に対して、適切な相談対応スキルを身につけるためのトレーニングを実施します。これには、ヒアリング技術や心理的サポートの方法、法律知識などが含まれます。また、相談窓口の担当者が常に最新の情報とスキルを持ち続けられるよう、定期的なフォローアップ研修も提供します。
外部相談窓口の提供外部専門機関との連携:企業内での対応が難しい場合には、外部の専門機関と連携し、相談窓口を提供します。これにより、従業員が安心して相談できる環境を整えます。また、状況に応じて匿名での相談が可能な窓口を設置し、従業員が安心して問題を報告できる体制を整えます。
周知と利用促進相談窓口の存在と利用方法を従業員に周知するための広報活動を行います。社内掲示板などを活用して情報を発信します。

最後に

ハラスメント防止対策は、企業が健全で持続可能な成長を遂げるために不可欠な要素です。従業員が安心して働ける環境を整えることで、生産性の向上や離職率の低減、そして企業の信頼性向上にもつながります。しかし、実際に効果的な対策を実行するには専門的な知識と経験が必要です。当事務所は、21世紀職業財団認定のハラスメント防止コンサルタントが在籍しており、豊富な実績と深い知識を持って皆様の企業をサポートいたします。

「あなたの企業を守る最強のパートナー」として、私たちは従業員一人ひとりが笑顔で働ける職場作りをお手伝いします。

企業独自での対策に限界を感じている方、具体的なアドバイスが欲しい方、是非一度、当事務所にご相談ください。

あなたの企業の未来を守るため、全力でサポートいたします。今こそ、ハラスメントのない健全な職場環境を目指し、一緒に一歩踏み出しましょう。

menu