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新加算対応に向けてのポイント

はじめに

令和6年度の介護報酬改定に伴い、介護職員の処遇改善を目的とした加算の一本化が実施されました。これにより、旧処遇改善加算、旧特定処遇改善加算、旧ベースアップ等加算が統合され、新たに「介護職員等処遇改善加算」として再編成されました。新加算制度への対応は、介護事業所にとって非常に重要な課題です。適切な対応を行うことで、職員のモチベーションを向上させ、安定した雇用環境を実現し、サービスの質を向上させることができます。

本コラムでは、「新加算対応に向けてのポイント」を解説し、事業所がスムーズに新制度に移行できるようサポートいたします。具体的には、新加算取得に向けた要件の確認や実施すべき取り組みについて詳しく説明いたします。介護事業所の皆様が、この新たな制度に適応し、さらなる発展を遂げるための参考になれば幸いです。

新加算対応に向けてのポイント

1.職場環境等要件を精査しましょう

現行「6区分24項目」が「6区分28項目」になります。それぞれの区分に変更はありませんが、項目の内容が若干変わっています。特に「生産性向上のための取組」については、必須項目もありますので、注意が必要です。例えば、「生産性向上ガイドライン」の項目や「現場の見える化」の項目が必須となります。詳細な要件を確認し、事業所ごとに適切な取り組みを行いましょう。

職場環境等要件「令和6年度まで」

職場環境等要件(令和7年度以降)

2.月額賃金の改善額の確認

新加算を取得するためには「新加算Ⅳ」の要件を満たすことが必須です。この「新加算Ⅳ」の要件の一つが「月額賃金改善要件Ⅰ」です。具体的には、新加算Ⅳを取得するためには、その加算額の2分の1を「月額賃金」に充てる必要があります。例えば、訪問介護事業所の場合、加算率が12.4%であれば、6.2%以上を月額賃金の改善に充てなければなりません。

3.ベア加算を算定していない事業所は注意

新処遇改善加算の取得には、ベア加算の取得が必須です。ベア加算の取得要件としては、「旧ベア加算額の3分の2以上」を月額賃金の改善に充てる必要があります。この対象職種は介護職員だけでなく、事業所の判断により他の職員の処遇改善にも充てることができます。

4.処遇改善加算Ⅱを処遇改善加算Ⅰにするためには

新処遇改善加算Ⅱを取得できる事業所は、「処遇改善加算Ⅰ」の取得にチャレンジすることをお勧めします。そのためには、「キャリアパス要件Ⅲ」を満たすことが必要です。キャリアパス要件Ⅲとは、介護職員について、経験や資格に応じて昇給する仕組みまたは一定の基準に基づき昇給を判定する仕組みを設けることを指します。

5.現行処遇改善加算Ⅳを取得している事業所は注意

現行で処遇改善加算Ⅳのみを取得している事業所は、令和7年度以降、処遇改善加算の取得ができません。そのため、処遇改善加算Ⅲ以上を取得するための施策が必要です。具体的には、以下のキャリアパス要件を整備する必要があります。

①キャリアパス要件Ⅰ: 任用要件および賃金体系の整備

任用要件の設定:
介護職員が特定の職位に昇進するためには、一定の経験年数や資格取得が必要とされること。
例えば、介護福祉士の資格を持つ者がリーダー職に昇進するためには、実務経験3年以上が必要といった具体的な要件を設ける。

賃金体系の整備:
職位や職責に応じた明確な賃金制度を設ける。
具体的には、基本給に加え、職務手当や役職手当など、職位に応じた賃金体系を整備し、昇給の基準を明確にする。
これにより、職員が自分のキャリアパスに沿ってどのように昇給するのかを理解しやすくする。


キャリアパス要件Ⅱ: 研修の実施等

次の①および②を満たすこと。

① 介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及び(1)又は(2)のような具体的な計画を策定し、研修の実施や研修の機会を確保していること。

(1) 資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施(OJT、OFF-JT等)し、介護職員の能力評価を行う。

(2) 資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。

②  ①について、全ての介護職員に周知していること。

これらのキャリアパス要件を整備することで、現行の処遇改善加算Ⅳから処遇改善加算Ⅲ以上へと移行し、さらに事業所全体の職場環境の向上を図ることができます。キャリアパス要件の詳細な整備と運用を通じて、職員のモチベーションを高め、長期的な雇用の安定を実現しましょう。

まとめ

新加算対応に向けて、職場環境等要件の精査や月額賃金の改善、ベア加算の取得など、各事業所が必要とする取り組みをしっかりと行うことが重要です。特に、各区分ごとの要件を正確に把握し、適切な対応を進めることで、スムーズに新加算の取得が可能となります。
当事務所では、これらの取り組みをサポートし、事業所の成長と職員の働きやすい環境づくりをお手伝いいたします。お気軽にご相談ください。

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