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新加算の取得に向けて~早見表を中心に(2)

現在、介護職員の処遇改善を進めるために、事業所は新加算I~IVの取得要件を満たすための具体的な取り組みを進める必要があります。今回は前回に引き続き、具体例を挙げてどのように新加算を取得するかについて解説します。

具体例:(旧)処遇改善加算Ⅰを取得し、特定処遇加算なし、ベースアップ加算を取得している事業所の場合

現在の状況:

訪問介護事業所Aは、現在処遇改善加算Ⅰとベースアップ加算を取得していますが、特定処遇加算は取得していません。(加算率18.2%)職員の賃金改善は行っていますが、キャリアパス要件や職場環境等要件の整備がまだ不十分です。

今後の取り組み:

訪問介護事業所Aが新加算Ⅰ(24.5%)を取得するためには、以下の具体的な取り組みが必要です。

1.月額賃金改善要件の整備

新加算Ⅳ(14.5%)の加算額の2分の1(7.2%)以上の月額賃金改善が必要です。現在取得しているベースアップ加算Ⅰに加え、介護職員の基本給や毎月支払われる手当を引き上げる必要があります。(令和6年度については適用を猶予)

2.キャリアパス要件の整備

キャリアパス要件IV(改善後の年額賃金要件)の整備:
例:勤続10年以上の介護福祉士の賃金を年額440万円以上に引き上げます。

キャリアパス要件V(介護福祉士等の配置要件)の整備
例:訪問介護事業所の場合、全介護職員のうち30%以上を介護福祉士にする。
※特定事業所加算Ⅰ・Ⅱを引き継ぐものと考えられます。

3.職場環境等要件の整備(各区分ごとに2以上全体で13の取組)

「入職促進に向けた取組」区分

例1:法人や事業所の経営理念やケア方針の明確化(①)
法人の経営理念やケア方針、人材育成方針を明確にし、全職員に共有します。これにより、職員の目標意識を高め、組織全体の統一感を醸成します。
例2:求人情報の充実化と広報活動の強化。(③)
事業所のホームページや地域の求人サイトに「経験・有資格者」にこだわらない求人情報を掲載し、他産業からの応募者が求める情報を提供します。

「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」区分

例1:上位者によるキャリア面談制度の整備
キャリアアップを支援するために、年に4回、上司や担当者によるキャリア面談を実施し、職員の働き方やキャリアについての相談に乗ります。
例2:働きながら資格取得支援制度の導入。(⑤)
実務者研修の費用を補助し、勤務シフトの調整を行って資格取得を支援します。

「両立支援・多様な働き方の推進」区分

例1:有給休暇の計画的な取得支援。(⑪)
有給休暇を取得しやすい意識づくりのため、60%以上の有休取得率目標を設定します。
例2:柔軟な勤務形態の導入。(⑩)
パートタイムやフレックスタイム制度を導入し、多様な働き方を支援します。

「腰痛を含む心身の健康管理」区分

例1:メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実(⑬)
業務や福利厚生制度に関する相談窓口を設置し、メンタルヘルスも含めた職員相談体制を整備します。
例2:短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックの実施(⑭)
短時間勤務労働者も含めた全職員を対象に、健康診断やストレスチェックを実施します。

「生産性向上のための業務改善の取組」区分

例1:生産性向上ガイドラインに基づく業務改善。(⑰)
生産性向上ガイドラインを導入し、効率的な業務運営を推進します。具体的には、業務フローの見直しや業務手順の標準化を図ります。
例2:現場の見える化の実施。(⑱)
業務の効率化を図るために、現場の課題を見える化し、課題の抽出、構造化、業務時間調査を実施します。
例3:介護ソフト、情報端末の導入。(㉑)
業務効率化・情報共有化のため、介護ソフトや情報端末を導入します。記録や情報共有を円滑に進めることができます。

「やりがい・働きがいの醸成」区分

例1:定期的なミーティングの開催。(㉕)
月1回の全体ミーティングでケアの好事例や感謝の言葉を共有します。
例2:地域交流イベントの実施。(㉘)
地域の住民や児童との交流イベントを定期的に開催し、職員のモチベーションを高めます。

4.見える化要件の実施

職場環境等の取り組みの見える化:ホームページや介護サービスの情報公表制度を活用して、実施している職場環境の改善取り組みを公開します。
例:事業所のホームページにおいて、取り組んでいる職場環境改善の内容や成果を写真やレポート形式で定期的に更新し、公表します。

結果:

これらの取り組みにより、訪問介護事業所Aは新加算Ⅰの要件を満たし、令和7年度以降に新加算Ⅰを取得することが可能となります。

経過措置と新加算要件の適用

令和6年度においては、上記以外にも経過措置として新加算Vが導入されます。この経過措置により、事業所は旧加算から新加算への移行を円滑に進めることが可能です。
この新加算Vは、事業所が令和7年度以降の新加算I~IVの要件を満たすための準備期間としての役割を果たします。事業所は必要な改善措置を段階的に実施し、新加算I~IVの要件を整備する時間を確保できます。

適切な職場環境の整備は、職員のモチベーションを高め、業務の効率化を図るために不可欠です。当事務所では、これらの取り組みをサポートし、特別養護老人ホームや福祉事業所など、さまざまな事業所の成長と職員の働きがいの向上に貢献いたします。
ぜひ、お気軽にご相談ください。

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