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処遇改善加算の一本化に向けた経過措置と職場環境等要件(2)

「両立支援・多様な働き方の推進」および「腰痛を含む心身の健康管理」

イントロダクション

令和6年度の介護報酬改定により、介護職員の処遇改善加算が一本化されることが決定しました。この改定は特別養護老人ホームや福祉事業所の経営者にとって重要な意味を持ちます。本記事では、この改定に伴う経過措置と、令和7年度以降に求められる職場環境等要件のうち、「両立支援・多様な働き方の推進」と「腰痛を含む心身の健康管理」について詳しく解説します。

処遇改善加算の一本化と経過措置

介護職員の処遇改善加算は、平成24年度の介護報酬改定から導入され、以降、特定処遇改善加算やベースアップ等支援加算などが追加されてきました。しかし、複数の加算制度が存在するため、制度が複雑化し、事業者の事務負担が増加していました。このため、令和6年度の改定では、これらの加算を一本化し、「介護職員等処遇改善加算」(以下「新加算」)が創設されることとなりました。

経過措置の概要

新加算の導入に伴い、旧加算から新加算への移行において、事業者が円滑に適応できるよう、経過措置が設けられています。令和6年5月31日時点で旧加算を算定している事業者は、令和6年度末まで経過措置区分として新加算を算定することが可能です。また、令和6年度中は職場環境等要件の適用が猶予されるため、事業者は柔軟に対応できます。

職場環境等要件の重要性

令和7年度以降、介護職員の働きやすさを向上させるための具体的な取り組みが求められます。これらの要件を満たすことで、新加算を適用することができます。以下では、「両立支援・多様な働き方の推進」と「腰痛を含む心身の健康管理」について詳述します。

「事務担当者向け・詳細説明資料」より

両立支援・多様な働き方の推進

1.子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備⑨

職員が子育てや家族の介護と仕事を両立できるように、休業制度を充実させます。例えば、育児休暇や介護休暇を法定以上に拡充し、柔軟な取得が可能となるよう制度を整備します。
可能であれば事業所内に託児施設を設置することで、子育て中の職員が安心して働ける環境の提供なども考えられます。

2. 柔軟な勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、正規職員への転換の制度等の整備⑩

職員のライフスタイルや事情に合わせた勤務シフトや短時間正規職員制度を導入し、柔軟な働き方を支援します。また、職員の希望に応じて非正規職員から正規職員への転換制度を整備します。例えば、フレックスタイム制度や短時間勤務制度の導入、希望者が正規職員へ転換できるようなキャリア相談などが考えられます。

3.有給休暇を取得しやすい雰囲気・意識作り⑪

職員が有給休暇を取得しやすい職場環境を作るために、具体的な取得目標を設定し、その達成を推進します。例えば、年に1週間以上の連続休暇を2回取得することや、付与日数の60%以上(例)を取得することを目標にすること等が考えられます。また、上司や同僚から積極的に休暇取得を促す声かけを行い、取得状況を定期的に確認します。具体的には、月次の休暇取得状況を報告し、上司からの声かけも実施等が考えられます。

4. 有給休暇の取得促進のため、情報共有。複数担当制等による、業務属人化の解消⑫

有給休暇の取得を促進するために、情報共有を徹底し、複数担当制を導入することで業務の属人化を解消します。また、業務配分の偏りをなくし、全員が休暇を取りやすい環境を整備します。具体的には、業務のマニュアル化や共有フォルダの活用により、誰でも対応可能な業務体制を構築することや、業務負担の偏りをなくすための定期的な業務レビューの実施などが考えられます。

腰痛を含む心身の健康管理

1. 業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実⑬

職員が業務上の問題や福利厚生に関する疑問、メンタルヘルスの悩みを気軽に相談できる窓口を設置します。この相談体制の充実により、職員は心身の健康を維持しやすくなり、職場環境の改善が期待できます。例えば、定期的な産業医によるカウンセリングセッションの実施などが考えられます。

2. 短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施⑭

短時間勤務の職員を含めた全職員が健康診断やストレスチェックを受診できるようにします。これに加え、快適な休憩室を設置することで、職員の健康管理を徹底します。
具体的には、年2回の健康診断とストレスチェックを実施したりすることで職員の健康維持をサポートすることが考えられます。

3. 介護技術の修得支援、腰痛対策の研修、管理者に対する雇用管理改善の研修等の実施⑮

介護職員が身体の負担を軽減するための技術を習得できるよう支援します。これには、腰痛対策のための研修や介護機器の使用方法の指導が含まれます。また、管理者向けの雇用管理改善の研修を実施することで、全体的な職場環境の向上を図ります。
具体的には、腰痛予防のためのリフトやスライディングシートの使用方法の研修、管理者に対する適切な人材管理方法の研修の提供などが考えられます。

4. 事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備⑯

職場での事故やトラブルに迅速かつ適切に対応できるよう、マニュアルを作成し、体制を整備します。これにより、職員は安心して業務に取り組むことができ、トラブル発生時の対応がスムーズになります。

結論

令和6年度の介護報酬改定に伴う処遇改善加算の一本化と経過措置、令和7年度以降に求められる職場環境等要件について理解することは、特別養護老人ホームや福祉事業所の経営者にとって非常に重要です。特に、「両立支援・多様な働き方の推進」と「腰痛を含む心身の健康管理」の具体的な実施が、職員の働きやすさと健康維持、ひいては介護サービスの質の向上に直結します。

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