令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率が変わる—その影響と対応策
一気に高齢化が進む現代日本において、働く高齢者の雇用をどのように守るかは重要な課題となっています。
そんな中、11月8日、厚生労働省より、リーフレット「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率が変わります」が公表されました。企業の負担軽減と高齢者の就労意欲を高める目的で導入された「高年齢雇用継続給付」が、今後の制度見直しによってどのような変化を迎えるのか、その概要と企業が取るべき対応策を解説します。
【参考リンク】厚生労働省 令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
【参考資料】令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
高年齢雇用継続給付とは
高年齢雇用継続給付とは、60歳以上の労働者が賃金が減少した場合に、その減少を補填するための給付金です。対象となる労働者は、60歳以上65歳未満であり、給与が60歳到達時点に比べて一定割合以上減少している場合に受給資格があります。これにより、高年齢労働者が現役で就労を続けるインセンティブを与え、労働力不足の緩和に貢献しています。
令和7年4月1日からの変更点
今回の改正は、主に給付率の変更に焦点が当てられています。具体的には、賃金の減少率に応じた支給率が見直され、従来の給付額に比べて一部引き下げが行われます。厚生労働省によると、これまで支給されていた最大15%の支給率が、見直し後は最大10%程度に引き下げられることになります。この改正の背景には、高齢者の就業率が上昇していることや、社会保険財政の健全化が挙げられます。
支給率変更の具体例
• 従来の支給率: 60歳到達時点の賃金に比べて賃金が61%未満に低下した場合、支給率は最大15%。
• 改正後の支給率: 同じ条件下では、支給率が最大10%に引き下げ。
このように支給率が低くなることで、受給者が受け取る給付金額は減少します。
この改正が企業に与える影響
高年齢雇用継続給付の支給率引き下げにより、企業はさまざまな影響を受けることが予想されます。まず、労働者側の受け取る金額が減少するため、60歳以上の労働者が継続雇用に消極的になる可能性があります。これにより、労働力確保に影響を与えるだけでなく、職場全体のモチベーション低下を招くリスクも考えられます。
また、企業にとっては、賃金引き下げに伴う人件費の抑制が一部緩和される反面、優秀な人材の流出を防ぐために別途の給与・報酬体系やインセンティブ制度を整える必要性が出てくるでしょう。
企業が取るべき対応策
今回の支給率変更に対応するために、企業は以下のような施策を検討することが求められます。
1. モチベーション維持のための施策
賃金以外の面で労働者の意欲を高める取り組みを強化する必要があります。具体的には、柔軟な勤務体系の導入や、スキルアップのための研修制度を充実させることが有効です。これにより、労働者の仕事に対する満足度を向上させることができます。
2. 評価制度の見直し
高齢労働者の経験やスキルを適切に評価する新たな人事制度を検討することが重要です。年齢だけでなく、職務内容や貢献度に応じた評価を行い、報酬を支給することで、従業員の納得感を高めることができます。
3. 雇用形態の多様化
契約社員やパートタイムといった多様な雇用形態を活用することで、個々の従業員のニーズに対応した雇用を提供しやすくなります。特に、高年齢労働者の働き方を見直し、無理なく働ける環境を整えることで、定着率を高めることが期待できます。
改正後の制度における課題
制度変更による支給率の引き下げは、財政面での持続可能性を確保するための策とされていますが、その一方で労働者の収入が減少し、働き続けることの魅力が低下するリスクも内包しています。特に、賃金が大きく減少するケースでは、受給者が生活設計に支障をきたす可能性があるため、企業としての対応が求められます。
まとめ
令和7年4月1日からの高年齢雇用継続給付の支給率見直しは、企業にとっても大きな転機となります。企業が今後も持続的に高年齢労働者を支援し、労働力を確保するためには、今回の制度変更を受けて迅速かつ適切な対応を取ることが求められます。特に、職場環境の改善や労働者の意欲を高める取り組みを積極的に進め、長期的な視点での人材確保戦略を策定することが重要です。
これからも高齢化社会を見据えた雇用対策が必要不可欠となる中、私たちの社労士事務所では、企業の課題解決に寄り添い、適切なアドバイスとサポートを提供してまいります。高年齢雇用に関するご相談は、ぜひお気軽にお寄せください。
【参考リンク】厚生労働省 令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
【参考資料】令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します