退職・解雇|試用期間中の職員。「相性が合わない」という理由で本採用を拒否(解雇)できますか?
単に「相性が合わない」「社風に合わない」という主観的な理由だけでは、本採用拒否(解雇)は認められず、違法(無効)となる可能性が高いです。
試用期間は「お試し期間」だから自由に解雇できる、というのは大きな誤解です。
「相性が合わない」といった抽象的な理由ではなく、「具体的な問題行動」や「指導しても改善が見られない事実」が客観的に記録されていない限り、裁判では通用しません。
試用期間中の労働契約は、法的には「解約権留保付労働契約」という性質を持ちます。
これは、「入社後の働きぶりを見て、不適格であれば解約(解雇)できる権利を予約している契約」ですが、この権利行使は無制限ではありません。
最高裁(三菱樹脂事件)は、本採用拒否が認められる条件として以下の厳格な基準を示しています。
- 採用時には知ることができなかった事実があること。
- その事実によって雇用を継続することが適当でないと判断することに、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること。
つまり、「なんとなく合わない」は客観的な理由にならず、また「その程度の理由で職を奪うのは厳しすぎる(相当性がない)」と判断されるリスクが高いのです。
判断のポイント
1. 「相性」を「具体的な事実」に変換できるか?:裁判所は「性格」そのものではなく、性格に起因する「業務上の支障」を審査します。
× ダメな例:
「暗い」「協調性がない気がする」「反りが合わない」
○ 有効になりうる例:
- 「協調性がなく、配慮を欠いた言動により、社内関係者や取引先を困惑させ、軋轢(あつれき)を生じさせた」
- 「上司の指示に対し、正当な理由なく反抗的な態度を繰り返し、業務遂行を停滞させた」
このように、「相性の悪さ」が具体的な業務妨害や職場秩序の乱れにつながっている証拠が必要です。
2. 「指導」を尽くしたか?(特に新卒・未経験者):新卒や未経験者の場合、能力不足や態度の問題があっても、使用者が教育指導を行う義務があります。「指導を受けたにもかかわらず改善が見られない」というプロセスを経て初めて、解雇の正当性が認められます。
一方で、即戦力として高待遇で採用された中途採用者(管理職など)の場合は、能力不足による解雇が比較的認められやすい傾向にあります。
3. 解雇予告の手続き(14日ルール):試用期間中であっても、雇用開始から14日を超えて引き続き雇用している者を解雇する場合は、通常の解雇と同様に「30日前の解雇予告」または「解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)」の支払いが必要です。
「試用期間中は即時解雇できる」というのは、入社14日以内の場合に限られます。
【参考となる裁判例(OK事例とNG事例)】
▼ 本採用拒否が「有効(OK)」とされた事例
• 協調性の欠如(ヤマダコーポレーション事件):
中途採用された管理職(係長)が、協調性に欠け、配慮のない言動で社内や取引先と軋轢を生じさせたケース。「勤務に臨む姿勢や態度といった根本的で重大な問題」として本採用拒否を有効としました。
• 繰り返されるミスと態度(日本基礎技術事件):
危険な行為や問題行動を繰り返し、指導を受けても改善が見られなかった新卒社員に対し、「今後指導しても能力向上の見込みがない」として解雇を有効としました。
▼ 本採用拒否が「無効(NG)」とされた事例
• 期間が短すぎる(オープンタイドジャパン事件):
高額年俸で即戦力として採用した部長職であっても、わずか2ヶ月弱で「能力不足」と断じて解雇したことは、職責を果たす期間として短すぎ、指導の機会も不十分として無効とされました。
• 求めていたレベルが高すぎる(セガ・エンタープライゼス事件):
平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、「著しく労働能率が劣り、向上の見込みがない」場合でなければ解雇は認められないと判示しました。
• 些細なミス(ファニメディック事件):
獣医師としての細かいミスや勉強会への出席状況などを理由にした解雇について、能力不足で改善の余地がないとまでは言えないとして無効としました


