休職・メンタルヘルス|精神疾患で休職していた職員が、復職後すぐに再び休職を希望しています。会社としてどこまで義務がありますか?
復職が形式的なものであった場合、「休職期間がリセットされる」とは限りません。通算規定の有無が重要です。
復職と再休職が近接している場合、企業としては以下の3点を必ず確認・整理する必要があります。
1.「治癒」とみなされない可能性がある
労働契約上の「治癒」は、労務提供義務を完全に履行できる健康状態に回復したことを意味します。復職後まもなく同一の精神疾患で再休職に至る場合、実態としては前回の休職が「治癒に至っていなかった」と評価されるリスクがあります。
これは、【東京地判平成18年4月26日(学校法人K学園事件)】など複数の判例でも認められています。→ このような場合、「復職したからリセット」と単純に考えるのは誤りです。
2.就業規則に「通算規定」があるかどうかが分かれ目
当事務所では、下記のような通算条項を就業規則に定めておくことを推奨いたします。
「復職後○か月以内に、同一または類似の傷病で再び欠勤または休職した場合は、前回の休職期間と通算する」
この規定があることで、復職と再休職を「一連の傷病によるもの」として扱い、休職期間を通算し、満了後には退職・解雇とする正当性が明確になります。
▶ 一方、通算規定がないと、労働者側から「新たな病気」として主張された場合、会社として再度ゼロから休職期間をカウントする(=無期限に雇用関係が継続される)リスクがあります。
→ 労務トラブルを防ぐには、通算規定を明記しておくことが不可欠です。
3.会社の「安全配慮義務」と「雇用維持義務」の境界線
使用者には【労働契約法第5条】に基づく「安全配慮義務」があります。つまり、従業員の心身の健康に配慮する義務です。
しかし、これは労務提供が不可能な社員を無制限に雇い続けなければならないという意味ではありません。
休職期間満了後、就業規則に基づいて退職・解雇とすることは【合理的な運用】として判例上も認められています(例:【大阪地判平成22年10月22日 関西電力事件】等)。
このように、「どこまで配慮すべきか」「いつまで雇用を維持すべきか」の線引きは、法律・判例・就業規則の内容を踏まえた極めて専門的な判断になります。
現場感覚だけで対応してしまうと、「配慮が足りない」と主張される一方で、「無制限に抱え込む」結果になり、組織全体の疲弊につながるおそれもあります。
復職・再休職を繰り返すケースこそ、就業規則の文言、過去の対応履歴、診断書の内容を整理したうえで、次の一手を設計することが重要です。
判断に迷うような段階では専門家として当事務所にご相談にただくことで、結果的に大きな労務トラブルを防げるケースも少なくありません。
職場のメンタルヘルス対応は、法律の知識と現場理解のバランスが求められる領域です。初動対応を誤れば、労災申請や訴訟、職場全体の空気の悪化といったリスクにもつながりかねません。
当事務所では、医療・福祉業界の現場事情に即した実務対応を得意としており、「復職判断の基準がわからない」「主治医と会社側で意見が食い違っている」といった難しいケースにも対応してきました。
お困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。


