年次有給休暇|時間単位の有給休暇を取得した日に残業した場合、残業代はどう計算すればよいですか?
質問:職員が「時間単位の年次有給休暇(時間休)」を1時間取得し、そのうえで所定労働時間後に勤務を続けた場合、残業時間の扱いはどのようになりますか?
例:
- 所定労働時間:7時間30分(休憩45分)
- 9:00〜10:00 時間休
- 10:00〜17:15 勤務(実働 7時間15分)
- 17:15〜19:00 勤務(1時間45分)
- この場合、割増賃金はどの部分に発生しますか?
結論:時間単位有休を取得しても、「所定労働時間」は減りません。
したがって、所定労働時間を超えた時点から “法内残業” が発生し、1日8時間・週40時間を超えれば “法定時間外労働(割増賃金)” になります。
ポイントは次の2つ:
時間有休を取得しても、その日の所定労働時間の枠が変わるわけではない。
残業が割増になるかどうかは、「法定労働時間(1日8時間・週40時間)」を超えたかで判断する。
具体的な計算例
■ 例:
- 所定労働時間:7時間30分(休憩45分)
- 時間休:1時間
- 実働時間(休憩除く):
7時間15分(定時内)+1時間45分(定時後)
= 9時間00分(実働)
■ 残業区分
所定労働時間超え(7時間30分を超えた部分)
→ 法内残業
→ 割増ではなく通常賃金(就業規則で手当付与する企業もあり)
【7:30〜8:00 = 0:30(法内)】
法定労働時間超え(8時間超え)
→ 法定時間外労働(25%割増)
→ このケースでは 1時間00分が該当
【8:00〜9:00 = 1:00(法定外・割増)】
計算結果(一覧)
| 区分 | 時間 | 賃金の扱い |
|---|---|---|
| 法内残業(所定超〜8時間以内) | 0:30 | 通常賃金(割増なし) |
| 法定時間外労働(8時間超) | 1:00 | 25%割増 |
| 合計残業 | 1:30 | 内訳上記のとおり |
なぜ「時間有休を取っても所定時間は変わらない」のか
年次有給休暇は「労働義務の免除」であり、 所定労働時間そのものを短縮する制度ではない。
とくに時間単位有休についても、 “所定労働時間の枠組みそのものは動かない”という前提で行政解釈・実務運用が確立している。
そのため、時間休を1時間取っても、 その日が「所定7時間30分 → 所定6時間30分」になるわけではない。
医療・介護・福祉現場で起こりがちな誤解
誤解1:「時間有休を1時間取ったので、所定労働時間も1時間短くなる」→ 誤り
年次有給休暇は「労働義務の免除」であり、
所定労働時間そのものを変更する制度ではない(労基法39条)。時間単位年休についても、
「所定労働時間の枠が短縮される」という規定はどこにも存在しない。したがって、
時間有休を1時間取得しても、その日の「所定労働時間」は本来どおり維持される。
つまり、
「労働義務が免除された(=その時間働かなくてよい)」だけで、
「所定労働時間そのものが減る」という法的効果はない。
誤解2:「時間有休を取ると、8時間超えたかどうかの判断も変わる」→ 誤り
割増賃金の発生基準は、
労働基準法32条「法定労働時間」(1日8時間・週40時間)。この「法定労働時間の限度」は、
年次有給休暇の取得により変動しない。時間有休を取得したかどうかではなく、
実際に労働した時間が法定労働時間を超えたかどうかで判断する。
つまり、
「有休を取った=8時間超えの判定基準まで動く」ことは一切ない。
誤解3:「時間有休を取った日は残業が発生しない」→ 誤り
労基法上の「残業(時間外労働)」は、
“実際に労働した時間” が法定労働時間を超えたかどうかで決まる(労基法32条/37条)。年次有給休暇は「労働したものとみなす」時間ではなく、
労働義務が免除されているだけ。よって、実際の労働時間が
- 所定労働時間を超えれば「所定外労働」
- 1日8時間を超えれば「法定時間外労働(割増)」
として扱われる。
結論:時間有休を取ったかどうかではなく、労働した時間数だけで残業の有無が決まる。
実務担当者(医療・介護・福祉業界)にむけて
勤怠システム設定に注意
一部の勤怠システムでは、「時間有休を取得した日に所定時間が変動してしまう」という誤設定が起きることがあります。
→ 必ず「所定労働時間は固定」で設計すること。
シフト制(変形労働制)との関係
- 1か月単位の変形労働制を採用している施設では、 “法定時間外”の判定が日ごとではなく、期間の総枠で決まる。
- 時間有休の扱いと変形労働時間制が混乱しやすいため、 「日ごと」「期間枠」の両方で確認する必要がある。
早出・遅出・夜勤のある職場での応用
医療・介護現場では
- 早出が45分早まる
- 夜勤の明け勤務に発生
- 訪問介護の移動の兼ね合い
など、例外処理が多いため、「時間有休取得日の残業は、所定と法定の両方で二段階判定」を徹底するのが最も安全です。
当事務所からの提案
当事務所では、医療機関・社会福祉法人における
- 時間有休取得日の勤怠判定
- 法内・法定残業の分岐設定
- 夜勤との関係整理
- システム設定の最適化
- 残業計算の誤りによる是正指導対策
について、現場運用に合わせたサポートを行っています。
「時間単位有休を取った日の残業計算が不安」
「勤怠システムが正しく設定できているか確認したい」
といったお悩みがあれば、現在の運用状況をお聞かせいただくだけでも、改善の方向性をご提示できます。



