採用|職員の経歴詐称(学歴や職歴)が発覚しました。数年後の発覚でも懲戒解雇は可能ですか?

重要な経歴の詐称は、事業所との信頼関係を破壊する重大な行為として、懲戒解雇の理由となり得ます。ただし、詐称の「重要性」がポイントになります。

判例では、「もし真実の経歴が分かっていたら、事業所はその職員を採用しなかったであろう」と客観的に認められるような重要な経歴詐称の場合に、懲戒解雇が有効と判断される傾向にあります。

判例・具体例

資格詐称・職歴詐称

看護師や介護福祉士など、職務遂行に不可欠な資格・職務経験を偽った場合は重大な経歴詐称となり、懲戒解雇が有効になる傾向が明確です。

例:実際にシステムエンジニアの職歴詐称では、会社が本来採用しなかったと客観的に判断できたため懲戒解雇が認められている事例があります(都島自動車商会事件、大阪地裁昭和62年2月13日判決など)。

犯罪歴の詐称

犯罪歴を隠すことも、職種や業務内容次第では重大性を持ちえます。例えば、過去に犯罪歴と学歴詐称が同時に発覚した事案(炭研精工事件、最判平成3年9月19日)では、学歴・犯罪歴いずれも「雇用の意思決定に重大な影響を与える」ため懲戒解雇が有効と判断されています。

学歴詐称(低学歴を装う場合も含む)

最終学歴を高く・低く偽るケースでも、「学歴が採用基準と密接に関係していた」場合は重大な詐称として認められることがあります。高卒者を募集していた会社に短大卒と偽って入社・以前の職歴も詐称→懲戒解雇有効とされた例があります(スーパーバッグ事件・東京地裁昭和50年11月13日判決など)。

些細な詐称(軽微なアルバイト歴など)

業務と関係の薄いアルバイト歴等、重要性の低い詐称は懲戒解雇の理由にならないケースが大半です。

実務対応の注意点

経歴詐称による懲戒解雇を行う際は、本人に弁明の機会を与え、事実確認を慎重に実施することが不可欠です。就業規則には「経歴を偽って採用された場合」など、該当する懲戒事由を明記しておくことが前提となります。

また、最終判断を急がず、客観的な重要性や業務への影響度を専門家と確認して進めることが肝要です。

まとめ・専門家への相談

経歴詐称解雇は、高度な事実認定や適正な手続が求められる領域です。トラブルや無効リスクを避けるためにも、弁護士、社会保険労務士など専門家に早めに相談し、具体的な手順やリスク管理策を確認しましょう。

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