年次有給休暇|有給休暇を買い取ることはできますか?
原則として、年次有給休暇の買い取りは法律で禁止されています。
労働基準法第39条では、「労働者の心身のリフレッシュのために休暇を与えること」を目的としており、使用者が金銭で休暇取得の代替をさせることは認められていません。
ただし、以下のような例外的なケースに限り、買い取りは可能とされています。
買い取りが認められる主な例外
ケース | 買い取りの可否 | 補足 |
---|---|---|
① 退職時に未使用の有給が残っている | 〇 | 使用できないことが確定しているため、金銭で精算可 |
② 法定日数(※)を超える有給休暇(会社独自の上乗せ分) | 〇 | 使用者との合意があれば可能 |
③ 使用者が一方的に「買い取るから休暇を与えない」とする | ✕ | 違法(労基法第39条違反) |
※ 法定日数=週5日勤務であれば「年10日~20日(勤続年数に応じて)」
関連法令・通達・厚労省資料
■ 労働基準法 第39条(年次有給休暇):「使用者は、労働者に対して継続し又は分割した10労働日以上の年次有給休暇を与えなければならない。」
この規定は「有給休暇を取得させること」が目的であり、金銭での代替(買い取り)は原則認められていません
■行政通達 昭和30年11月30日 基収4718号:「年次有給休暇の買い上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る年休の日数を減じ、ないし請求された日数を与えないことは、労働基準法第39条違反である」
つまり、事前に買い取りを約束したり、買い取りを理由に有給休暇を与えないことは違法です。
実務上のポイント
- 会社が有給休暇を買い取る義務はありません。あくまで任意です。
- 上乗せ分の買い取りは「労使合意」に基づいて行う必要があります。
- 有給休暇管理簿の整備や、取得奨励のためのルール(例:繰越上限、半日休暇の導入など)を就業規則に明記しておくと、制度的な運用がしやすくなります。
- 退職時の未消化分についても、会社が買い取りに応じるかは任意です。ただし、会社側の事情で取得できなかった場合は、損害賠償請求が認められる場合もあります。
- 退職時の買い取りについては、使用者側から「買い取るよう強要」するのではなく、労働者が取得しなかった事実が前提になります。
- 有給休暇の買い取りを恒常的に行うと、制度趣旨を損なうため、行政指導や罰則の対象になる可能性があります
当事務所では、買い取りに頼らず取得を促進する社内制度の整備、就業規則や有給管理ルールの見直し、および残日数管理の仕組み作りもサポートしています。
「制度の趣旨を守りつつ、現場の実情に合わせた運用」を実現するためのご相談も承っております。