雇用契約| 試用期間中だけど、突然やめさせても大丈夫ですか?
試用期間中であっても、安易な解雇は違法とされる可能性があります。
試用期間とは、あくまで本採用前の「適性判断の猶予期間」であり、すでに労働契約は成立しています(労働契約法第6条)。
そのため、試用期間中であっても正当な理由がなければ解雇は認められません。
関連法令・判例・行政通達
■ 労働契約法 第16条(解雇の制限):客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効とする。
➡ 試用期間中であっても、「勤務態度が気に入らない」「即戦力でなかった」などの曖昧な理由では、裁判で解雇無効とされる可能性が高いでしょう。
■ 労働基準法 第21条(解雇予告の除外):使用者は、14日以内であれば解雇予告手当を支払わず解雇可能。
➡ ただし、14日を超えた場合は、「解雇の30日前予告」または「解雇予告手当(平均賃金の30日分)」が必要です。
■ 判例
- 東京地裁平成24年8月23日判決(生命保険募集業務の従業員)
生命保険募集業務の会社で、試用期間中に本採用を拒否された従業員が解雇の無効を主張し、裁判所は本採用拒否(留保解約権の行使)は無効と判断しました。会社に対し未払賃金14か月分以上の支払い(バックペイ)を命じています。 - ニュース証券事件(東京地判 平成21年1月30日)
証券営業マンが成績不振を理由に、試用期間6か月のうちわずか3か月強で解雇された事案。
裁判所は「わずか3か月強の期間をもって従業員としての適格性を有しないとは到底認めることができない」とし、解雇は客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と認められないとして無効としました。 - オープンタイドジャパン事件(東京地裁 平成14年8月23日)
年俸1300万円で採用された部長について、2か月余りで「業務の速やかさに欠ける」などの理由で本採用を拒否されたが、裁判所は「2か月で職責を果たすことは困難」として本採用拒否を無効と判断しました。 - ブラザー工業事件(名古屋地裁 昭和59年3月23日)
中途採用の「見習」社員から「試用」社員に登用され、その後さらに長期間の試用期間を経て解雇された事案。裁判所は「見習社員期間中に業務適性は判断できる」とし、長期の試用期間設定に合理性がないとして解雇を無効としました。
実務上の注意点
- 採用時に労働条件通知書や雇用契約書で、試用期間中であること、その目的(業務適性や勤務態度の確認)を明記しておくことが重要です。
- 試用期間中の不適格を理由とする解雇でも、面談記録や注意指導の経緯を残しておかないと、トラブルに発展することがあります。
医療・福祉業界では「人手不足」から焦って採用したものの、ミスマッチが早期に発覚するケースも少なくありません。
「試用期間中だから切れる」という考え方ではなく、あくまで「本採用前の判断材料を見極める期間」として、慎重な対応が求められます。
試用期間の設計や雇用契約書の見直しは、ぜひ一度ご相談ください。