労働契約|有期雇用労働者の契約の更新の際に気を付ける点は?
有期労働契約とは?
「有期労働契約」とは、労働契約の期間があらかじめ定められている雇用形態を指します。契約書には開始日と終了日が明記されており、期間満了により契約は自然終了します。ただし、現実には更新を繰り返すケースも多く、契約更新時の取り扱いには一定のルールと配慮が必要です。
労働契約締結時の明示義務
「契約更新の有無」および「更新の判断基準」は書面で明示
平成25年4月の法改正以降、有期契約労働者と契約を結ぶ際には、以下の2点を書面により明示することが義務付けられています(労働基準法施行規則第5条)。
① 更新の有無に関する明示(例)
- 自動的に更新する
- 更新する可能性がある
- 契約の更新は行わない
② 契約更新の判断基準(例)
- 契約期間終了時の業務量
- 労働者の能力や適性
- 勤務態度・成績
- 会社の経営状況
- 業務の進捗状況 など
これらは、後々のトラブル防止にもつながる重要な情報です。契約書や労働条件通知書に明確に記載しましょう。
有期契約に関する3つのルール
① 無期転換ルール
同じ使用者と有期労働契約を通算5年を超えて更新し続けた労働者は、本人の申込みにより「無期労働契約」へ転換できます。
- ポイント:労働者からの「申込み」が必要
- 通算契約期間には、空白期間が6か月未満であれば通算されます
② 雇止め法理の法定化
最高裁判例で認められていた「雇止めが無効となる場合」が、法令上明文化されました。たとえば以下のような場合には、更新拒否が制限される可能性があります。(雇止めのためには「合理的理由」が必要)
- 更新を繰り返して長期雇用が実質的に続いている場合
- 更新が期待されるような会社の言動があった場合
③ 不合理な労働条件の禁止
有期契約という理由だけで、無期契約労働者と比べて労働条件に不合理な差を設けることは禁止されています(パート・有期法第8条)。
有期契約の上限期間と例外
原則として、有期契約の契約期間の上限は3年です(改正前は1年)。ただし、以下のケースでは最大5年までの契約が可能とされています。
- 専門的な知識・技能・経験を有し、かつ厚生労働大臣が定める基準に該当する場合
- 満60歳以上の労働者が契約を結ぶ場合
これにより、労働者にとっては長期的な雇用の選択肢が広がり、キャリア形成の基盤が整えやすくなるとともに、企業側も専門人材の継続的な活用が可能となります。
雇止め・更新トラブルを防ぐために
かつては「有期契約の更新や雇止め」に関して、通達(平成12年12月28日基発第779号)で留意事項が示されていました。現在は、労働契約法においてもこれらの考え方が反映されており、以下の点を実務で徹底することが求められます。
- 契約更新の有無・基準をあいまいにしない
- 労働者に対して、更新判断の理由を丁寧に説明する
- 就業規則や契約書に雇止めの条件を明示しておく
- 定期的な見直しや相談体制を整備する
有期労働契約は、一見するとシンプルに見えるものの、更新の扱いや契約終了の判断を誤ると法的リスクが極めて高くなります。特に雇止めや無期転換に関する紛争は、裁判や労働審判に発展するケースも少なくありません。
企業としては、書面での明示、更新基準の合理性、職場内の運用の一貫性を保つことで、有期契約労働者との信頼関係を築き、不要なトラブルを未然に防ぐことができます。