労働契約|労働契約とは?

労働契約とは、労働者が一定の労働条件のもとで、使用者に対して労務を提供し、その対価として賃金を受け取ることを約束する契約のことです。つまり、「労働を提供する代わりにお金を受け取る」という両者の合意によって成り立ちます。

この契約は、書面だけでなく口頭でも成立します。たとえば、採用面接の場で「採用します」と言われて応募者がそれを受け入れた場合、その時点で労働契約が成立したと判断されることがあります(民法第526条)。

労働契約を結ぶ際に必要な「労働条件の明示」

労働基準法第15条では、使用者が労働契約を締結する際に、労働者に対して労働条件を明示する義務があると定められています。具体的な明示項目は、労働基準法施行規則第5条に列挙されており、主に以下の通りです。

【書面での明示が必要な項目】

以下の項目は、書面(労働条件通知書など)で交付する必要があります。

  1. 契約期間(有期契約の場合はその期間と更新の有無など)

  2. 就業場所および業務の内容

  3. 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える残業の有無、休憩・休日・休暇に関する事項、シフト勤務がある場合の交替制の内容

  4. 賃金(基本給や手当など)の決定方法・計算方法・支払方法・支払日・締切日、昇給の有無

  5. 退職に関する事項(自己都合・解雇・定年などの取扱い)

【書面以外でも明示可能な項目(口頭でも可)】

以下の項目については、書面での交付が必須ではなく、就業規則などを提示して説明すれば足ります。

  1. 退職手当の有無、支払時期、計算方法など

  2. 賞与や臨時の賃金、最低賃金に関する事項

  3. 労働者が負担する費用(制服代、食費など)

  4. 安全・衛生に関する事項

  5. 教育訓練の実施に関する事項

  6. 災害補償や私傷病時の補助制度など

  7. 表彰や懲戒に関する規定

  8. 休職制度の有無とその内容


労働契約の成立とその形式

労働契約は、労働者と使用者の意思が合致すれば成立します。法的には書面を交わす必要はなく、口頭での合意だけでも契約として認められます。ただし、後々のトラブル防止のためにも、労働条件通知書や雇用契約書など、書面を交付することが望ましいとされています。

契約成立の具体例としては以下のような流れが一般的ではないでしょうか。

  1. 採用通知を交付する

  2. 労働契約書を取り交わす

  3. 労働条件通知書や就業規則を提示し、労働者が同意する

  4. 給与辞令を発行する

なお、採用時に「誓約書」を提出させるケースもありますが、これは労働基準法上の必須書類ではなく、違法な内容が含まれていなければ任意で提出を求めることは可能です。


労働契約は、働く側と雇う側の信頼関係と合意に基づく重要な法的枠組みです。

書面を交わさなくても契約は成立しますが、労働条件の明示は義務であり、特に法定された項目については適切な形で提示しなければなりません。使用者にとっては、労働条件を明確に示すことが、のちのトラブル予防に直結します。

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