社員が“魔法”をかけられたようにイキイキ働くには|職場の“世界観”づくりと労務管理の視点から

「9と3/4番線のホーム」に夢中

先日のゴールデンウィーク、家族で初めて「ワーナー ブラザース スタジオツアー メイキング・オブ・ハリー・ポッター」に行ってきました。
その世界観の再現度、緻密な作り込みに、思わず言葉を失うほど。あの“魔法の世界”は、実際には驚くほど地道な手作業と、圧倒的な仕組みによって支えられていました。
そこでは観客としてではなく、まるで自分が魔法省やホグワーツの一員になったかのような錯覚に陥ります。

スタジオツアーでは、「ホグワーツ城」や「9と3/4番線のホーム」など、作品の細部にまでこだわった空間が広がっています。

セットや小道具の精巧さだけではなく、「この世界にはこういうルールがある」という一貫性のある“世界観”が徹底されていたからだと感じました。世界観の作り込みとは、単に小道具や照明の話ではありません。そこに関わるスタッフひとり一人が、“この世界の一部”として機能していたのです。

この体験から私は、ある介護施設の施設長がこぼした一言を思い出しました。

「うちの現場もね、魔法みたいに回ってるんですよ。でも、誰が何をどうやってるかは見えづらいんですよね」

今回はこの視点から、職員が“イキイキと働く職場”をつくるための「世界観づくり」と、それを支える制度や文化について、労務管理の視点で考察します。

※本記事に登場する人物・企業名は、すべてプライバシー保護の観点から架空のものです。ただし、記載されている事例は、当事務所が実際に経験した複数のケースを基に再構成したものであり、その本質は実際の経験に基づいています。

職場に“世界観”はあるか

世界観は「理念」だけではない

スタジオツアーでの体験は、「世界観」の大切さを改めて感じさせてくれました。壁に貼られた掲示物ひとつとっても、それが“魔法界”であることを前提につくられており、整合性があるからこそ、観客は違和感なくその世界に没入できます。

では、皆さま方の職場はどうでしょうか。「私たちは人を大切にします」「チームワークを重視します」といった理念を掲げていても、評価制度や人間関係、上司の言動がそれとズレていれば、職員は“世界観の崩壊”を感じてしまいます。

評価制度と“見えない価値観”のズレ

ある福祉施設では、介護福祉士として20年以上働いてきた職員が、ある日突然「もう潮時かな」と退職を申し出ました。
制度上は誰もが公平に評価されることになっていましたが、実際に昇進していくのは、管理職会議で発言の多い職員ばかり。

その職員はこう言いました。

「うちは“静かに真面目にやる人”より、“声の大きな人”が評価されるんですね。私はちょっと場違いだったのかもしれません」

評価制度は存在していても、それがどのように運用されるかによって、現場に流れる“見えない価値観”が職員の意欲を左右します。

文化をかたちづくる“仕組み”の重要性

ハリー・ポッターの世界にも、魔法教育のカリキュラム、寮制度、杖の選定など、数々の“制度”があります。ルールがなければ、魔法は混沌とし、世界観も成立しません。

同じく職場においても、評価制度や勤怠ルール、研修制度などの“仕組み”が、理念と行動を結ぶ重要な橋渡しとなります。理念だけで職員は動きません。理念を支える“制度”が職場に一貫性をもたらすのです。

現場から学ぶ“世界観づくり”の工夫

医療機関での制度の再構築

都内のある中規模医療法人では、離職率の高さが悩みでした。調査してみると、若手職員は「頑張りを見てくれる職場」と評価していた一方で、ベテラン事務スタッフは「何を評価されているのか分からない」と不満を感じていました。

問題は評価制度にありました。自己申告書と直属上司の推薦だけで評価が決まるため、発信力のある職員に偏って評価が集中していたのです。

そこで導入されたのが「360度評価」に近い“相互評価”と“他者貢献ポイント”の制度。周囲への支援や日常の声かけなど、“組織の土台を支える行動”が評価対象に含まれるようになりました。

その結果、目立たなかったベテラン事務職員も自然と存在感を増し、職場全体のバランスが取れ始めたのです。

介護施設での“語り合い”による文化の可視化

都内のある社会福祉法人では、月に1度、「わたしたちの1シーン」と題した事例共有のミーティングを行っています。
職員一人ひとりが、最近印象的だった利用者とのやりとりや、他職員の行動に感動したエピソードを共有する時間です。

形式的な報告会とは異なり、“自分の言葉”で語られるエピソードは、組織の理念を感情的に共有する力を持っています。

施設長はこう言います。

「制度や方針はもちろん大事ですが、“うちらしさ”はこういう語り合いから育つものだと思うんです」

制度ではつくれない“世界観”は、こうした非公式なコミュニケーションの中でかたちづくられていきます。

偉大な組織は“世界観”を持っている――『ビジョナリー・カンパニー』より

私の座右の書でもあるジェームズ・C・コリンズ著『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』では、偉大な企業の特徴として「基本理念」の存在が強調されています。

「偉大な組織の中核にある基本的な価値観であり、われわれが何者で、何のために存在し、何をやっているのかを示すもの」
(第3章「利益を超えて」より)

また、同書では「理念の内容そのもの」よりも、「どれだけ貫き通しているか」が重要であると説かれています。

「理念が本物であり、企業がそれを貫き通しているのが重要である」
(同上)

そして、さらに印象的なのは以下の視点です。

「重要な問題は、企業が“正しい基本理念”を持っているかどうかではなく、“好ましく感じようが感じまいが、その理念を貫き通しているかどうか”である」

これは、職場における“世界観”づくりにも通じます。理念が制度や評価、日常行動にまで落とし込まれて初めて、職員は「この職場で何を大事にすべきか」が理解できるのです。

当事務所としてできる支援

当事務所では、単に制度をつくるのではなく、「職場が本当に大切にしたい価値観」を制度として“翻訳”する支援を行っています。

「理念と評価がズレている気がする」
「職場文化が人によってバラバラになっている」
そんなときは、制度づくりを見直すチャンスです。

制度は“言語化”の手段であり、理念を支えるフレームであり、職員が安心して“その職場の住人”であることを実感する道具です。

理念を“魔法”に変えるために

職員が“魔法にかけられたように”イキイキと働いている職場には、明確でブレない“世界観”があります。
その世界観は、理念だけでなく、制度・文化・日常の行動まで一貫して整っていることで実現されます。

当事務所では、そうした“職場の物語”をかたちにする制度設計を支援しています。
もしあなたの職場で、「理念が形骸化している」「制度と現場がかみ合っていない」そんなお悩みがあれば、ぜひご相談ください。

理念を“魔法”に変える。その第一歩は、“仕組み”づくりから。
初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

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